お知らせ

22 July,2007
POSTED22:17:17

制約という機能

書店に行くと、面白そうな書籍がたくさん並べられています。予算のことや物理的な重さ等を考え、それらすべてを購入するのをかろうじて思いとどまるわけですが、これがネット書店になると、マウスを少し動かしてクリックするだけであっという間にたくさんの書籍を買ってしまうことになります。そんなにたくさんの書籍を読む時間はないのですが、制約が少ないネットにとってはそんなこと知ったことではありません。

サーチエンジン対策が重要だ、となると、すべてのサイトの運営担当者はSEO対策を施します。すべてのサイトがSEO対策を施すと、SEO対策そのものに意味がなくなります(恐らく検索エンジンはすべてのサイトが過剰に適応したころにはアルゴリズムを変更するはずです)。カーナビに表示される渋滞情報やETCが、普及率50%を超えた瞬間から情報優位性がなくなるのも同じような理由です。アフィリエイトが有効だ、となると、サイトそのものがアフィリエイトスパムだけで構成されたサイトが一気に広がり、アフィリエイトの有用性が低下します。

要するに、自分で自分の首を絞めてしまう、過剰に普及してしまう、というのがデジタルコンテンツの特徴のひとつかもしれません。有意な差そのものをなくそうとする動きに抗うひとつの方法は、新しい方法を産み出し、時間的な差をつけることしかありません。しかしその差に追いつくためのスピードがとてつもなく速いので、矢継ぎ早の方法論を展開できる企業だけが生き残れるということになります。そういうことができる企業の数はそれほど多くはないでしょうから、周回遅れのプレイヤーはまったく別のルールでマーケットに参入するほうが成功する確率は高いかもしれません。

さて、話が少しそれました。私たちの日常的な感覚からすると、制約というのは可能性を制限するいやな現象ととらえられがちですが、これは実はありがたい「機能」です。制約がないといろんなことが上記のデジタルデータ・機能のようにとめどなく広がってしまします。美味しそうな料理がたくさん並んでいても、胃袋の大きさという制約条件のためすべて食べることはできない。しかしそのために健康が担保される、というようなことですね。夏休みの宿題として「なんでもいいから作文もってこい」と言われるよりは「この三冊のいずれかについての読書感想文を書きなさい」という明確な指示を与えられるほうが、生徒ははるかに動きやすくなるはず。つまり制約とは編集方針を与えてあげる、コンテクストを作ってあげる、ということに他なりません。

制約の与え方がエラく気が利いている、というのがこれからのネットビジネスの基本になるでしょう。

Posted by takeda at 22:17 | Trackbacks [0]
ページの先頭へ戻る